店長はしばしう〜んと眉を寄せて悩み、当たり障りなく


「若いわりにやる気に満ち溢れた優秀な男だよ」


と笑っていた。
とりあえずそこそこ仕事は出来るということで良さそうだ。
まぁ売上の悪い店舗に来るのだから当然か。

どんな人なんでしょうね、と口々に予想を立てる他の人たちをよそに、私はというと違うことを考えていた。


もしも私がコマチを辞めてブラマに乗り換えたとして。
今まさに売上を伸ばしつつある忙しい現場で、やりがいを持って働けるというのはなかなかいいような気がする。
だけどやっぱりコマチのアットホームさも捨て難い。

ブラマのお給料がどの程度なのか、ちょっと調べてみるくらい構わないだろうか……。
いやいや、浮気とかじゃなくてね。

なんちゃって。


現実的なエグいことに思いを巡らせているうちに、会議室での緊急会議は終わってしまった。


『ちょうど長年働いてたベテランさんが辞めちゃってね、困ってたところだったの〜。だから来てくれて嬉しい!君はとっても真面目そうだし明るいし、すぐ採用しちゃう。これから末永くよろしくね』


と、目尻を下げてニコニコと握手を求めてきてくれた現店長。
職探しをしていた私は、面接当日その場で採用された。あの日、私を歓迎してくれた店長の笑顔は忘れない。
なんとなく仏様にも見えたほどだ。なむなむ。

しかしその店長が代わってしまうとなると、若干気が重かったりして。

はぁ、というここしばらく止まることのないため息をまた漏らしてしまった。
なにやら色々と憂鬱だ。
新しい店長に慣れるまでも時間がかかりそうだ。


ところが、そうではない人達もいるらしい。