にこりと笑って、彼がパソコンの画面を切り替える。

クリスマスケーキの予約状況だ。
予約を開始した当初はあまり好調ではなかったものの、今月に入ったら立て続けに予約が入り出した。

亘理さんがうちのお店のアカウントを作り、SNSを駆使して宣伝を始めたのだ。
そういう発想すら思い浮かばなかったので、ネットを活用する彼のやり方に従業員はみんな感心したものだ。


「ホールは間もなく完売ですね。この調子なら安田さんが言っていた通り予約ですべて完売になりそうですね」

真剣な表情でつぶやく彼の横顔を、私はじっと見ていた。

この人は、最初にお店に来た時はどこかの業者さんと間違えてしまうくらいオーラがない人だと思っていたけれど。
それは違っていた。
あの時やっていたLED電灯への交換も、意味があるものだった。店内が明るくなったことで商品がよく見えるようになったのだから。

意味がないようでいて、ちゃんと考えてやっている。

亘理さんはコマチの救世主、と今日のお昼休みに大熊さんがパートさんたちと話していた。
それは、素直に私もそう感じている。

すごく地味だと思っていた彼が周りより少し輝いて見えるのは、彼がコマチを変えてくれているからなのか、それとも─────


「白石さん?」

「…………はいっ?」


話しかけられると思っていなかったので、我に返る。
なんでしょうと尋ねると、彼は笑っていた。

「もしもカツヒコヤスダのクリスマスケーキが完売したら、もともとコマチで売り出してるケーキを提案していこうと思っています。カツヒコヤスダに比べたら見劣りしますけど、定番っぽい方がお好きな方もいらっしゃるだろうし」

「なるほど!売り切れてもまだあるんですね」

「その旨は明日にでもホームページやSNSに載せておきますね。店頭でもそのように説明してもらえるように、白石さんから皆さんに伝えてもらってもいいですか?」

「分かりました」


コマチのオリジナルのクリスマスケーキも、一応存在しているのだ。
特例でカツヒコヤスダのケーキを取り付けた亘理さんは、本社のゴーサインをもらってこうやって動いている。

そう考えると、コマチは本当に自由なお店作りをしているなぁと感じる。なんでもありというか、上に立つ人でそのお店の色が変わる。
……それって面白い。