そのあとのコマチは、大きく動きだした。

各部門から一人ずつお惣菜部門へ異動があり、変わらなかったのは私が所属するレジ部門くらいだった。
お惣菜に力を入れると亘理さんが話していた通り、スタッフの人数を増やしたぶん手間をかける時間もできたため、品数を増やしてもてんてこ舞いにならずにすんなり馴染んでいった。

もともと売上が良かった唐揚げは味の種類を増やして売り場も広げたので、さらに売れるようになり、今まで置いていなかったちょっとオシャレなおかずは若い主婦に人気で、売り切れることも増えてきた。

本当に、本当に少しずつだけど、前よりは売上が伸びてきたのだ。

だけどそれは、亘理さんの中では「売上が向上した!」という手応えにはまったく結びついていないようだった。


「微々たるものですよ、こんなの」

お風呂を済ませて、毎晩恒例のミルクティータイムである。
私は亘理さんの隣に座り、彼が見つめるパソコンの画面を一緒になってのぞき込む。
二人とも片手にはホカホカのミルクティー。

「そんなぁ。私たちはとっても喜んでたんですよ、ここ数ヶ月は数字が下がっていくのしか見てなかったんですから」

「まさかこんなもんで満足してるとか?」

「そ、そういうわけじゃないですけど……」

彼は普段はのほほんとしているように見えるが、仕事となるとかなり手厳しい。
口ごもる私に、亘理さんが店長としてやってきた先月から今までの売上の推移のグラフを見せてくれた。

「全体を見てもまだこれしか伸びてませんよ。お惣菜のメニューも、元が取れない煮物とかサラダは切りたいところなんですけど、それじゃあ彩り悪いし見た目が良くない」

「お惣菜のパックを丸いものに変えたのが好評みたいですよ、ママ友会でそのまま出して使えるって。常連さんが言ってました」

「そうですか、思い切って変えてよかったです」