ひとまず渡された資料に目を通すと、事細かにうちの店舗の問題点がパソコンによって書き出されていた。
数えきれないくらいある項目に頭がクラッとしそうになる。
項目は「衛生面」「接客面」「商品面(部門別)」「勤務形態」「ディスプレイ」「建物の老朽化」などその他諸々。
これを改善するにはいったいいくらつぎ込めばいいのかと問いただしたくなるような内容だった。
「こ、これは」
思わず言葉を失っていると、亘理さんはポリポリと頭をかいて困ったように眉を寄せて笑った。
「三日間でだいたいそんなもんです。これは一気に変えようとしても変えられません。少しずつやるしかないです。そのためには俺だけじゃどうにも出来ません」
「……そうですね」
「白石さんにも協力してもらいたいんです。前のお仕事でそういうの学んでますよね?俺たちで色々と打ち合わせをして、他の方々にも伝えていきましょう。パートの大熊さんがおっしゃっていました、昔はうちのお店はすごく賑わっていたって」
あぁ、そういえば、彼は初日にちゃんと決意表明していたじゃないか。
「全っっ然お客様が来ないお店を、なんとかまた盛り立てましょう」って。
さらには従業員の顔も名前も覚えてきていたんだった。
今思い返すと、ちゃんと初日から熱意はあったのだ。
彼の態度や顔に出ていないだけで。出にくいだけなのだろう。
「白石さんは、このままでいいと思ってますか?」
確認するように尋ねてきたので、私は即座に「思ってません」と首を振った。何度も。
「契約社員なのに、大丈夫でしょうか」
「それは関係ないと言ったはずです」
「……何をすればいいですか?」
「俺はまず店舗内の仕入れや、在庫数なんかを考えていきます。それで、大幅にディスプレイを変更したいので、白石さんにはそちらをお願いしてもいいですか?大胆に変えていただいて構いませんから。集客を見込めるようなイベントの案も出してください」
─────ちょっと楽しくなってきた。
私は分かりました、とうなずいた。
職場の店長と同居なんて、明らかに奇妙だけど。
それでも何もしないでただ毎日が過ぎていくよりはいいかもしれないと思った。



