亘理さんは事務所にはおらず、店舗を探していたら鮮魚コーナーにいて、特売品のディスプレイを変えているところだった。

「亘理さん、今ちょっとよろしいですか?」

「はい」

手を止めて、彼が顔を上げる。
その顔は眠そうで、やはり昨日はあまり眠れなかったんだろうなと心苦しくなった。

「以前辞めたスタッフの、浜谷さんという方が亘理さんに会いたいと来ているんですが……」

「俺に?」

「はい。面識はありませんよね?」

「おそらくないはずですが。どこにいらっしゃいます?」

「レジのところにいます」


亘理さんはすぐにレジの方へと足を向けていた。
それを追いかけると、無事に会えた浜谷さんと挨拶やいくつかの会話を交わしたあと、亘理さんが店舗の裏へ彼女を促しているのが見えた。

何か、大事な話でもするのだろうか?


そう思った三十分後、浜谷さんは、なんとコマチの制服を着て店舗へ立ち始めたのだった。


「えええええ!浜谷さん!?どうして!?」


驚いたのは私だけではなかった。
一緒にレジ業務に当たっていたバイトの子も、他の社員さんも、浜谷さんをみんな知っていたので驚いて戸惑った。

当の浜谷さんは、ニコニコと楽しそうな笑みを浮かべて隣の亘理さんに目を向ける。
それを受けて、亘理さんが説明してくれた。

「急なのですが、今日から浜谷さんが復帰することになりました。そろそろ一人くらい増やしてもいいかなと考えていたので、ちょうど良かったです。みなさん、よろしくお願いします」

「はい!そういうことなので、新人の浜谷です!よろしくお願いします!」