「すごい雪ですね……こんなに降ってるの、久しぶりに見たかも」
食事を終えて外に出ると、ますます激しく降り積もる雪にちょっと狼狽えた。
ホワイトアウトとまでは行かなくても、視界不良に陥るのは目に見えている。
私のアパートはここから近いからいいけれど、亘理さんはこの状態で一時間も運転するのだから大変ではないだろうか?
それでも、先に亘理さんの方が
「白石さん、大丈夫ですか?こんな状態で帰れます?」
と、私のことを心配してくれる。
つくづく、いい人なのだ。
「私よりも亘理さんですよ!帰りの運転、すごく危険ですよ。気をつけて帰ってくださいね」
「はい、ありがとうございます」
コクリとうなずいた彼を見て、ほんの少し切なさを感じる。
この事務的な彼の受け答えにはもうすっかり慣れてしまったけれど、砕けることは一生ないのかな?
郁さんと話す時は、あんなに自然体だったのに……。
と、そこまで考えて改める。
やめよう、元カノのことを考えるのは。
亘理さんは着ていたダウンジャケットのフードをかぶると、「ここで少し待っててください」と言い残し、駆け足で吹雪の駐車場に向かう。
そして、二台並んだ私と彼の車の雪をスノーブラシで手早く下ろしてくれている。
そのことに気がついて、私も雪の中を走って彼の元へ行くと、車に積んでいたスノーブラシで雪下ろし手伝った。
「待っててくださいって言ったじゃないですか」
「亘理さんにだけさせるわけいかないですよ!」
「帽子もかぶってないのに」



