大熊さんがレジから抜け出して「知り合いなの?」と尋ねてくる。
私より先に、涼が答えた。
「知り合いっつーか、まあ、なんていうか」
「知り合いです、ただの!」
遮るように強い口調で答え、あまり彼の方は見ないようにしながら大熊さんに
「さっき私を呼んだのは、何かあったんですか?」
と聞くと、また先に涼が答える。
「俺がちょっと面倒なお願いしちゃっておばさんを困らせちゃったんですよね!本当にすみません」
この人はこういう人だったなぁと思い出す。
明るくて、ノリがよくて、万人受けするタイプ。あの時はそう思ってたけど、今見るとなんだか軽々しく見えてしまう。
今もこんなノリで仕事をしているのだろうか。
営業はトーク力が必要だから、彼のような人がいてもアリといえばアリなのだろうが。
「瑠璃ちゃん、お弁当っておかずとか指定して注文受けることって出来るのかしら?販売してるものをそのまま受注したことはあるけど、指定したりするのはやったことないから……」
大熊さんが首をかしげるので、私もそんな前例はないなと思い起こす。
特別にお弁当を一から作る作業になるから、こちらとしても手間になるはずだ。そんな手間をかけてまで注文を受けるべきかは、ここでは判断できない。



