中腰の体勢のまま動かなくなり、亘理さんが慌てたように彼を支える。
「どうしました?」
「こ、こ、腰が……やられた!」
「まさか、ぎっくり腰ですか?」
二人の会話を聞いて、私は絶句する。
じゃあこれからあと半日、私一人で子どもたちの相手をしなくちゃいけないの?
絶望感を漂わせていると、意を決したように亘理さんが顔を上げた。
「……仕方ないですね」
「そんな……。私一人でやれなんて言わないでくださいよ……」
「そんな鬼みたいなこと言いませんよ。俺が出ます」
「─────え!?」
十分後、私と亘理さんは並んで店頭に立ち、群がる子どもたちを元気に楽しく盛り上げていた。
子どもたちのために用意していた可愛らしいアイシングクッキーを、信じられない明るいテンションで亘理さんはひとつひとつ丁寧に配っている。
「はーい、どうぞ〜!今年も楽しいクリスマスにしようね〜!!……ほら、トナカイさんも!」
「……あっ、はい!さぁ〜みんな!並んで並んで!サンタさんからお菓子もらえるよー!写真も撮れるよー!」
視界は見えづらいけど、隣にいる亘理さんが見たことがないくらいの満面の笑顔で子どもたちと接しているのは新鮮である。
「ねぇ、ママー。さっきのサンタさんと違う〜。おじさんじゃなくてお兄さんになったー」
「なんか細くなったー」
「お腹とか全然出てないー」
鋭い子どもたちから次々に指摘され、亘理さんは一瞬動きを止めた……が、すぐに大げさなリアクションでとぼけた振りをした。
「なーに言ってるのかなー?サンタさんはサンタさんだよ〜!ダイエットして痩せたんだよ〜!メタボじゃなくなったんだよ〜!」
「ブハッ!!」
「ちょっとトナカイさん!トナカイさんがウケてどうするの!?」
つい笑ってしまったトナカイに注意するサンタの姿を見て、子どもたちだけじゃなく付き添いの大人たちも大爆笑している。
こんなコントみたいなことをするつもりはなかったのに!