アパートの駐車場に着いて、車を降りる時に気づいてしまったのだ。
私が座る助手席のグローブボックスの上に少しだけ収納スペースがあるのだが、そこに賃貸の住宅情報雑誌が数冊置いてあった。

その雑誌を見つけて、息を飲む。


エンジンを止めて先に車を降りた亘理さんが、なかなか降りようとしない私を不思議に思ったのか声をかけてきた。

「白石さん?」

「…………もう、見つけたんですか?物件」

「え?」

降りかけた体勢のまま、私は重ねて置いてある情報雑誌を指さす。
彼はのぞき込むようなかっこうでそれを見て、あぁと声を出した。

「まだ正式には契約してませんが、一応」

「……そうなんですね」

「いつまでも白石さんの家に置いてもらうわけにはいきませんから」


唐突に見えた、私と彼の同居生活の終わりに心が追いつけない。
のろのろと車をやっと降りて、力なくドアを閉めた。

「新居はどのへんで探してたんですか?」

アパートの階段をのぼりながら、それとなく聞いてみる。

いま思い返せば休みがあまりかぶることもなくて、私の知らないうちに彼が部屋探しをしていたということは自然なことなのだ。

私にとっては急なことでも、彼は前々からちゃんと探していたのだろう。

「本社の近くで探してました。今の店舗からは離れてますけど、車で一時間弱で着きますし、許容範囲かと」

「……いつから引っ越すんですか?」

「契約次第ですね。なるべく早く出ていけるようにしますから」