キッと急に自転車が止まった。

やっぱり余計な事言ってしまったのかと、ドキドキしていた。

でも振り向いた新くんの表情が柔らかくてほっとする。


「俺は今の自分に後悔はないから。南高行くのだって楽しみだし。っつーか、俺と同じ高校なのがそんなに嫌かよ」

「ち、違うよ!ただ、本当にそれでいいのかなって思っただけで…」

新くんがポンっと私の頭の上に手を置く。

「いいんだって。つまんねーとこ真面目に行くよりも、気の合った奴らと楽しい思い出作りてーし」

「そっか…」


新くんの目を見て、それが嘘じゃないと確信した。

その次の瞬間、新くんの手の甲が、私の額を触った。


「え……」

「ん。熱はねぇな」

「熱?」

「さっきプリクラ撮ったあと顔赤くなってたじゃん。りりは色白だからわかりやすいよな」

あ…陽太くんに触られそうになった時のことを思い出した。

「隙がありすぎだよなー、こーやって俺にも簡単に触られちゃうし」

額に触れていた新くんの手の甲が、ゆっくりと下に降りてくる。

そして私の右頬に当たった。


「梨々花!?」

突然、聞き覚えがある声がして、思わず新くんから離れた。