努力の方向性がわからないのは恋も同じで……。

自分だって好きになった理由もきっかけもわからないんだから、どうしたら好きになってくれるのかなんてわかるはずもない。
それでも「待ってるだけじゃダメだ」ってアピールを続けてきたつもりだったけど、私の自業自得なのか先輩が鈍感なのか、一向に伝わらない。


毎日わざわざ会いに通ってるくせに、

『先輩、偶然ですね!』

って言っていたら、

『本当によく会うよなー』

本当に偶然だと思われていた。

あんなに偶然が続くなら運命だと思ってくれてもよかったのに。


バレンタインまで待てなくて、聞き付けた先輩の誕生日にホールのガトーショコラを作った。
ガッツリ本命のラッピングまでして持って行ったのに、恥ずかしくってつい、

『先輩にはお世話になってるから』

って言い訳したら、

『そっか。ありがと』

と、言葉通り受け取られた。

『お世話になってる』だけならやり過ぎでしょ、あれ。



同じクラスの女子に「見た目が恐い」って言われて落ち込んでたから、思い切って

『私が彼女になってあげますよ!』

って言ったのに、

『後輩に気を使われるなんて終わってる……』

と余計に落ち込まれた。

かなり勇気出したのに。



私と先輩の間にある境界線はゴムでできているに違いない。
それもきっと帽子のゴム紐みたいにやわらかくて伸びのいいやつ。
押しても叩いてもビヨーンと伸びるばかりで越えられない。

「私がはっきり『好き』って伝えたら、本気にしてもらえるのかな?」

いつも照れ隠しで少し曖昧にしてしまうから逃げられるのかもしれない。
ゴムだって限界まで伸ばせば切れるし、ハサミで切ることもできるんだから。

「サッカー部の須藤先輩に『付き合ってほしい』って言われました。『明後日の花火大会に浴衣で来て』って。私の浴衣、きれいなヒマワリ柄なんですけど、私は先輩に見て欲しかったなー」

花火大会の日、先輩はまた「なんとか流星群」の観測会。
誘う前に撃沈している。

それでも須藤先輩のお誘いは即座に断った。
あんな人気者の告白を、瞬時に断ったんだよ!