夕方停電が解除されると、暖房をガンガン効かせた店内で、本の整理と今日の売り上げチェックが行われた。
真柴さんと加治さんがスリップやメモを見ながら、今日売った本をレジに打ち込んでいく。

「疲れたねえ。本を棚に戻すのは明日以降でいいから、ちょっと休もうよ」

本の詰まったダンボール箱を店内に引き入れた店長は、入り口のカーペットにだらりと脚を投げ出して座り込んだ。

「加治さんと真柴さんはまだ働いてますよ?」

「レジ二台しかないし。あの二人がやった方が確実だもん。がんばれー、辰人君! 芽実ちゃん!」

加治さんには完全に無視され、真柴さんにはレシートを投げつけられても、へらへら笑っている。

そうしているうちに、動き続けていた真柴さんの手が止まった。

「レジ誤差、5485円!? ちょっと待って! もう一回計算する!」

真柴さんがもう一回計算してもレジ誤差は5485円。
1000円誤差が出れば始末書を書くことになっている店で、この差は大きい。

「おお~、思ったより出たなあ」

そう言いながら店長は自分のお財布から一万円を出して、レジから4515円を受け取った。

「こんな事態だったんだから仕方ない。はい、誤差0で締めて」

やっぱり店長はバカだなって思う。
本当に本当にバカだなって、叫びたいほどバカだなって思う。