プシューっと音を鳴らして電車が到着した。
混雑した朝の、地下鉄の車両に乗る。

4両目の後ろ。

そこが、織田君との待ち合わせ場所。


開かないドアの前に立っている織田君は、私が乗ってきたのを見て、少しだけ表情を和らげた。


「おはよ」

「お、おはよう、織田君」

つきあって1ヶ月経つのに、まだちょっと緊張する。
しかも名字で呼んでる。織田君も。

でも、少し変わったのは、クールな彼のちょっと優しい表情が、よく見られるようになったこと。

そのたびに見とれてしまう私は、まだ片思い気分が抜けない……


「わ」

どんっと後ろの人にぶつかられ、その勢いでドアにもたれている織田君にぶつかった。