「辻くんを不幸な目に合わせたくないっ!」


それだけ言うと彼女は俺から背を向け、走り出してしまった。


だが、逃がすわけない。
ここで早瀬を逃したら彼女はずっとこのままだから。


「言って?」

早瀬を追いかけて、華奢な背中を抱き締めながら言った。


気づいてしまったから……
俺は早瀬が好きだ。

今まで幾度と無く、無表情を壊したい

泣き顔を見たい。


笑顔を見たい。


そう思ってきた……

でも、今は傍にいたい。
早瀬の力になりたいと思う。
早瀬が好きだから。