辻くんが大きな声を出したのは、私の目に光るものを見たから。


「どうした⁉︎」

「ごめん、なんでもないの……」


私、最低。


竜ちゃんのこと忘れようとしている。


忘れようとして新しい恋に踏み出そうとしている。


ダメ。


辻くんは友達。
友達だよ。


好きじゃない。

呪文のように、心の中で唱える。


「杏奈。」


そう思いたいのに……


優しく私の名前を呼んで、頬に触れてきた。


名前なんて呼ばないで。

好きになんて……なりたくないよ。


「つじく、……」

「俺が傍にいてやるからな。大丈夫だよ、杏奈。」


ポン、ポンっと優しいリズムで私の頭を叩く辻くん。


優しいね。ほんと。


悔しいけど……


大好きだよ………。


泣き疲れた私はいつの間にか眠りについていた