「で?これからどうするんですか?」
そう言った拓人に、私は体を更に硬くした。
「え、えっと……」
「ああ、葵はいいですよ。どちらかというと周りがどれだけ協力的にあなたを守るかですから。」
「う、うん…。」
うーん、相変わらず先ほどからお兄ちゃんや拓人たちが何度も言ってる言葉の意味がわからない。
「それより……栄斗はいい加減玲央を睨むのをやめてくれませんか?」
拓人がそう言っても、栄斗と玲央は改めるそぶりを全く見せない。私がはあ、とため息をつくと、拓人が
「全く……一番大変なのは葵なんですよ?わかってるんですか?」
と言った。すると栄斗が今度は拓人を睨んでいた。

「何でお前は葵が女だって知ってたんだよ?」

—————そう、あのとき、学園長室で、、、

「早く話せよ!」
「はあ、わかったよ。実はね、田口に葵が女だってバレたみたい。」
「「はぁぁああ!?」」
「ああああああああああ、葵!何もされてないか!?」
「泣かされたりしてないか!?」
栄斗はお兄ちゃんと同じ質問をして来て、私は首をかしげるばかりだったが、勇にぃの言葉に、私は何も言えなかった。
すると、お兄ちゃんがゆっくりと口を開いた。
「これは推測だけど、葵は結構泣いたと思うよ?」
そう言ったときのお兄ちゃんの表情は、清々しいくらい笑顔だった。笑顔すぎて、その場にいる人たちが、凍りついた。その凍りついた空気を壊したのは、勇にぃだった。
「田口……おまえ………(怒)」
「ひぃい!違います!話を聞いてください!」
しかし、玲央の必死の頼みも虚しく、栄斗と勇にぃに壁に追い詰められていた。
話す前は玲央に怒っちゃダメって言ってたお兄ちゃんももう自分の席でニコニコしているだけ。もちろん、昔から3人をよく知っている私は、何もできずに自分のせいで、とその場にしゃがみこむことしかできなかった。するとそこに、本当にかすかだが、
「キュウキュウ」
みたいな音が聞こえた。よく耳をすませていると、バンっと学園長室のドアが開いた。そこにはモカとチョコを肩に乗せた拓人が立っていた。