私は玲央に断りを入れてから学園長室に向かった。
コンコン
「し、失礼します、が、学園長……」
「葵……。」
「な、なんですか?」
「お兄ちゃん寂しいよぉ!いつもみたいに呼んで〜!」
「えぇぇ、うん、わかった。お兄ちゃん、どうしたの?」
私は半分呆れ気味で言い直した。
「ああ、それなんだがな、葵には新入生代表挨拶をしてもらおうと思ってね。」
「え?でも、私なんかでいいの?」
「もちろん!葵より頭いい人なんてこの学校にはいないよ。それに、本当の容姿はすごく可愛い女の子なんだから。」
それを聞いて、私は思わず体を強張らせた。それを、お兄ちゃんが見逃すはずがない。
「葵?どうしたの?」
「お兄ちゃん……、私、玲央に女ってばれ、ちゃった。」
そこまで言って、また思い出して、怒られる、と思って、泣いてしまった。
「ふっ、ふぇえぇ、ごめんなさい……。ばれないようにって、言われたのに……」
「葵!ばれたことは怒ってない。でも、何もされてないか?」
「え、う、うん。私がパニック起こして泣いちゃったから、ぜんぜん……最初は怒ってるように見えたけど、最後は優しかったよ。」
「そっか……あとで話を聞かないとな。(と言うか、問い詰めよう。葵を泣かせたんだしな(怒)) まあ、とにかく、怒ってないから。俺は葵を心配してるんだよ。でもまたばれちゃったら、お兄ちゃんに言ってね。約束。できる?」
そう言ってお兄ちゃんは私の頭を撫でてから小指を出してきた。
「ふふっ、約束するときお兄ちゃんいっつもこれだね。……うん。約束、できるよ。ありがとう。」
「じゃあ、はい、これ。スピーチ頑張って!この紙読むだけでいいから。」
そう行ってお兄ちゃんは私に原稿用紙を5枚ぐらい渡してきた。
「暗記しなくていいの?」
「できる?」
「え、うん。これ2回ぐらい読めば多分全部覚えられるよ。」
「そっか……そうだったな。うん。じゃあ、暗記してくれ。どうしても覚えられなかったら見ていいから。」
「うん、ありがとう。じゃ行ってきます!」
「行ってらっしゃい。」
私はお兄ちゃんに手を振ってから舞台袖に向かった。



