〜 玲央 SIDE 〜

トイレに行こうと思って脱衣所を開けると、そこにはウチの制服を着た髪の長い女が立っていた。

…………は?どういうことだよ。葵はどこ行った?

問い詰めた時の答えた声で、こいつが葵だということがわかった。
さらに問い詰めていくと、急に泣き出した。さらに追い討ちをかけるようなことを言うと、急に顔色を変えてまるで俺を他のだれかと比べているかのようだった。

「ぃ、いゃぁああっ!来ないでっ!いやああっ!はあ、はあ、はっ…………ご、めんなさ、ごめんなさい、ごめんなさい。ごめんなさい!」
急に葵がそう言って、そのあとはただただ震えているだけだった。
「葵、ごめん。怒らないから、顔上げて?大丈夫だから。理由を教えてくれないかな?」
俺がそう言ってからそっと離れると、葵が恐る恐る顔をあげた。その瞬間、俺は固まった。
さっきは興奮しててちゃんと見ていなかったが、メガネをとった葵の顔は怖いほど整っていた。
「ほ、本当……?」
「あ、あぁ……」
俺は葵をもう一度じっくり観察した。

メガネをかけててもその顔の美しさは隠し切れてなかったのに、メガネをかけていなかったらどうなっていたのだろうと思うほどだった。
目は茶色で、どこも濁ってなく、濡れた瞳はどこまでも澄んでいる。
スッとした鼻筋に、高すぎず低すぎない鼻。
唇はちょっとプックリしていて、まるでさくらんぼをを表したようだった。
ほっぺも桜色で、肌もきめ細かい、
まるで作られたように完璧な美しさだった。
それに、見ただけでもわかる、痛みを知らないような髪。
それは栗色で、軽くウェーブがかっている。
そこまで考えてから、ふと何かを思い出した。
どこかで見た顔だ。どこで見たんだ?

「玲央?」
「あ、わ、悪りぃ。」
「と、とにかく、行く準備するね。学園長に呼ばれてるから、あとで説明するのでも、いい?」
「あ、うん。ま、何があるのかは知らないけど、頑張れよ。あ、はい、これ。眼鏡とかつら。はい、行ってらっしゃい!」
「うん!ありがとう、玲央!私、頑張るから!(ニコ)」
そう言って葵は出て行った。
正直、眼鏡なしであの笑顔はやばい。ま、多分性格バレたけど、今は怖がってたっぽいし、こっちのままがいいか。

「……葵が話してくれたら、なんか嬉しいかも。どうせ他のやつは知らないだろうし。」
でも、きっと栄斗も知ってんだろうな。
「ふっ 俺も馬鹿だな。まっ、これからが楽しみだし?」
……あとで問いただしてやろう。
そんなことを考えながら、俺は体育館に向かった。

〜 玲央 SIDE 終わり 〜