照りつける太陽、少しの風で揺れる葉っぱ。
木には蝉がミンミンと鳴いている。

季節は夏。でも、まだ夏休みには入っていない。

今年は蝉が出てくるのが早いらしい。

今年は、蝉嫌いの私には優しくない夏から始まった。

「あっちーな…」
「それな。マジで俺夏嫌いだわ」

とかいう男子がいるけど、多分プールが始まると、「夏大好き!」とか言っちゃうんだろう。

例え、発言に矛盾があっても気にしないのが男子。

私はと言えば、プール嫌いだし、虫が嫌いだから、夏は何が何でも嫌い。

「溺れた時の対策の為に泳ぐ練習がある」?

私には、そんな練習不必要だ。
だって、海とか川に行っても泳がないから。


確かに涼しいものを一番に優先したい。
それは水嫌いになる前から、今もずっと思っている。

しかし、どうも水を好きになることは出来ずに今までの夏を過ごしてきた。


とりあえず、暑い。


溜息を零しながら、手で顔を仰ぎ、少しでも涼しくなろうとした瞬間、後ろからトントンと肩をつつかれた。


何となく、というか、もう誰につつかれたのかは察しているので「おはよう!」と朝の挨拶。

「おはよう、花奈」

「おはよう、千代ちゃん」

千代ちゃんは、私の幼馴染みで、親友。
近所に住んでいて、小さい頃からずっと仲良くさせてもらっている。


千代ちゃんは美人さんで、一緒に歩くと視線がいつも集まる。

羨ましいけど、私はそんな皆に注目されるほどの人間じゃないから。


「今日も暑いね、プール入りたいや」

千代ちゃんはそう言ったが、今日は生憎プールの授業は無いので、とても残念そうにしている。


「明日が暑いと良いね、明日プールあるらしいよ〜」


私が後ろの黒板を見ながら喋ると、千代ちゃんの顔は一気に明るくなる。



「早く明日になれぇ〜……」


最後の力を振り絞ったかのように喋る千代ちゃんは、少しだけ幼い。




「入れるといいね、千代ちゃん」




「うんっ」




いつも大人っぽいけど、たまに幼くなる千代ちゃんが可愛いな、って思う最近。