そして私たちの目の前までつかつかと歩いてきてその顔を確認した。


「なんでこんな奴とこんな時間まで…どこ行ったったと?」


今にも爆発しそうな怒りを必死に抑えて、静かにそう問い詰めてくる美結に私はおろおろしながら目を泳がせた。


「由姫に俺の買い物に付き合ってもらったんだよ〜」


透がいつもの調子でそうフォローしてくれるが、たぶん逆効果だ。


「由姫ぃぃ?なんであんたのくせに呼び捨てなんかしよると?」


もはやその表情は般若のごとく怒りをあらわにしていて何か言わないと透を殴り出しそうな勢いだった。


「え、それは由姫がいいって」


「透に全部話したの。私の過去。それでも受け入れてくれた。私のダメなところ教えてくれた。だからもっと仲良くなりたいって思ったの」



透の言葉を遮って、早口ながらも美結の目を見ながらそう言うと美結は少し驚いた表情でしばらく透を見ていた。


だけど、ふっと息を吐いて、さっきの声とは違ういつもの声で


「ごめん、干渉しすぎた」


一言そう言って、私の肩に手を置いた。


安心しながら、肩に置かれた手を両手で包み込んだ。


「謝らないでよ。心配してくれてありがとう」


「うん。そして、あんたもむかつくけど、言いすぎたごめん」


透の方をちらりと見て、美結はもう一度謝罪の言葉を口にした。


切り替えの早いところも美結のいいところだ。


透は返事を仕掛けていたが、美結は私の手を握って下宿の方は歩き出した。


「仕方ないなあ、許してやっても、ってえっ、ちょっと待ってよ」


一人で自分の世界に入っていた透が置いていかれていることに気づき、情けない声を出して追いかけてきていた。


美結はそんな透をフル無視をし、私が苦笑いを向けているといつのまにかもう下宿の前で、みんなでただいまーと言いながらドアを開けた。


とりあえず、3階の自分の部屋に荷物を開こうと美結と階段を上がっていった。


下宿の階段はそこまで広いわけではなく、美結と私2人でも並んで上るのは窮屈だった。


美結を前に、私が後ろにつき階段を上っていくと、数段上にいた美結がふいに振り返ることもなく問いかけてきた。


「由姫、あいつのこと好きなの?あ、恋愛的な意味で」


私から美結の表情は見えず、どんな気持ちで聞いているのかはわからなかったけど私ははっきりと言った。


「私が好きなのは陸玖だよ」


「そっか」


やっぱり後ろ姿からじゃ美結の心は読めなかった。