「ここが私たちの家。くつろいでいってね。」
案内された家は僕達が通っている学校からかなり離れた場所。どちらかと言うとデパートに近い。
「母さん、僕達、部屋に行く。」
「うん!私たち先輩とか、友達連れて自分たちの部屋にいるね。」
「えぇ、分かったわ。お菓子が欲しくなったら言ってちょうだいね。」
「じゃあ、行こっ。」
理駆先輩が莎駆先輩に車椅子を押されて移動する。

_______________パタン。

「こんなに早くバレるなんてねぇ。僕も驚くよ。」
「私も。」
「えっ、どっちが莎駆先輩ですか?」
哀川さんが疑問をぶつける。

「僕が荒垣理駆。でも、母さんとかの前では莎駆。柚木茜。」
「私は、荒垣莎駆。理駆、柚木葵。」
女の子の真似してるって恥ずかしいねー、なんて笑う理駆先輩。無表情の莎駆先輩。
「……親の前で、自分隠すの、疲れない、んですか…?」
彗が放ったこの一言により理駆先輩の表情が固まる。
「疲れない、訳ないじゃないか。」
「じゃあなんでやってるんですか?」
「緋山は今度は知らないのか。まぁ前は、霧谷が弓景のとこはいろいろ教えてくれたもんな。」
さすがの僕でもなんとなくムッとくる。澄じゃないから出来ないみたいな言い方。過去にもあった。澄と僕を比べることが。比べられることが。
「先輩達の母親が上司かなんかじゃないんですか?そして、父親がいない。」
「あー、ネット情報かぁ…。僕らの情報結構乗ってるもんね。」
「有名人。」


「まぁ、嘘ついてる理由は弓景なんかよりももっと汚い理由だけどね。」