今の時間は14時。桜岡駅までは1時間弱かかるはず。急がないと…っ。お別れになっちゃうとしても、お見送りをして、今までのお礼もして……。
玄関の鍵を閉める。少しでも走れるようにスニーカーを履く。きょうはスカートじゃないから走れる。
「よしっ。」
絶対に間に合わせよう。緋山君にはお礼を沢山言わなくちゃ。泣いちゃったらどうしよう。あと、伝えなくちゃ。緋山君は私にとってそばにいて当たり前の存在だったって、緋山君が大事だって。


「……っ。」

もう既に泣きそうだ。
こういう時に、自分の運動神経の悪さが嫌になる。急ぎたいのに、全然早く走れない。
「きゃっ。」
_______________ズザザッ。
転んでしまう。痛い。膝から血が滲む。普段から走っておけばよかった。だめだめ、こんなところで立ち止まってたら緋山君に追いつけない。

そして、私は緋山君のいる桜岡駅へ向かった。