1人だと余計に部屋に響く。電話番号まで入力した。だけど、発信ボタンが押せない。
緋山君はお兄さんといた方がいいかもしれない。だって、家族なんだもの。家族とは一緒にいたいと思うはず。あと、やっぱり男女だから気を遣わせてしまってるかもしれない。それだと、リラックス出来ないよね。
色々なものが頭に浮かんで押せない。

_______________プルルルル、プルルル、
急に電話がかかってきたから応答ボタンを押しちゃった。……誰かな…………。
「も、もしもし…。哀川です…。」


『知ってるけど。』


今一番聞きたかった声。今までメールでしかやり取りが出来なかったからたった3日くらいだけだけどその時間がすごく長く感じて、もう何年も声を聞いてないように感じた。
「緋山君!ど、どうしたの…?」
家に戻ってくるのかな。いや、戻ってこない可能性の方が高いよね…………………。

『言わなくちゃいけないことがあるから、桜岡駅に15時までに来てくれる。………迎えに行けなくて、ごめん。』

「えっ、」
そこまで言って通話が切れる。

さ、桜岡駅って、電車だよね。やっぱり緋山君はお兄さんと一緒に帰っちゃうのかな。