皐月ちゃんと緑くん

「はぁ…はっ」

あ!よかった、まだ一人でいる。
緑くんは、青々と茂る桜の木の下の小さな草むらで、熱心に虫をさがしている様子だ。
隣には虫かご、黄色っぽい蝶が捕らえられている。

……話しかけちゃ、邪魔かな…。


「ヨッシャ!」

「えっ」
緑くんのいきなりのガッツポーズに驚いて、声が出てしまった。

「あっ花岡さん、見てよ!」

緑くんは振り向いて、それをつまみ上げた。

そ、それは…!
とっさにやばいと思い私は両目を隠し、後退った。
一瞬、激しくうねるそいつの姿を見てしまった。だが、刹那のことだ…大丈夫、まだ浄化できる!
一刻も早く、視界からそいつを抹消せねば!

「やめて!それは無理!」

しばらくしてから

「あ、そうか…。ごめん。」

と緑くんは言い、そいつを逃がし、
草むらをぼーっと見つめていた。

「ううん…」
……ヒュゥ…
静かな風が吹く。沈黙が辛い。
皆といるときの緑くんは、こんな風に静かになることがない。
虫を悪く言ったのが悪かったのかな…。

いや、そもそも私には、興味がないのかもしれない。

緑くんからすれば、私は蝶がついてた人間くらいの認識。

でも、だからってせっかくのこの機会を無駄には…。

私はとっさに言った。

「そ、その蝶、はじめて見たけど綺麗だね。ヒョウ柄で…。」