皐月ちゃんと緑くん

気づいてもらうどころか、あの事件から1週間、1度も話したことさえない。

話しかけようにも、席が遠い。
緑くんが窓側の一番後ろで、私が廊下側の一番前。丁度、対角線の位置…。
こんな遠いところから緑くんに話しかけにいったら、私が緑くんを好きみたいじゃないか!いや、実際好きなんだけども…。

皆に好きなのがばれてしまうのは、絶対に嫌だ。恥ずかしくてもう学校に来れない。



キーンコーンカーンコーン

掃除の音楽が流れ出す。
カラオケ好きの校長先生が、魂込めて歌い上げる校歌である。こんなものを流して、恥ずかしくないのだろうか。私これを聞くたび、校長先生をすごいなと尊敬する。

ビュンッ

ほうきを取り出した私の隣を全速力で誰かが、突っ切っていく風を感じた。

「緑ー!!廊下を走るなー!」

え、緑くん!?振り向いたときには、
もういなかった。
あーぁ、見たかったなぁ…。
席の関係で、緑くんを見れる機会はすくない。

「緑、足はっや。いったいどこいったんだ?」

クラスの男子が口を開いた。私はとっさに耳をそばだてた。

「あー…中庭だよ。珍しい虫がいたんだって。あいつ授業中ずっと窓の外見てやんの。」

「ばかだなー、小学生か!」

中庭!なら今一人なはず…!
私は机を高速で横一列を引き、箒ではき、
全力をだし、掃除を早く終わらせた。

ごみ捨てじゃんけんになり、負ける用意は完璧だ。私は腕まくりをする。

「あ!さつきちゃん、すごい頑張ってくれてたから、私達でごみ捨てやっておくよ!」

とクラスの良心、ふうりちゃんが言った。
皆、そうだね。と納得してしまっている。
普段のときならありがたいけど…。
意義あり!と言う者はいないのか…。

「私、他に捨てたいごみがあるから!
    ついでにいってくるよ!」

私はごみと、まだ残っているジュースを掴んで、ポカンとしたみんなを尻目に、早足でごみ捨て場に向かった。