目元の光るアイシャドウとか、鮮やかな発色の唇とか。指先の豪華なネイルチップに持たれたブランド物の財布片手に、駅前にオープンしたカフェ。携帯を開けば流行りの流行語に謎のお揃いポーズ。
私には理解が出来なかった。例え、それが自分のステータスになるとしても興味が沸かなかった。

入学式を終え、早2週間。やっとの思いで過ぎた期間にそれが後3年も残っているかと思うと深いため息が溢れた。
都内某所にある仙律学園高校は名門校でもなければ在り来たりな不良高でもない。偏差値中の下、部活動も盛んではなく良くて都内ベスト32。強いて言うのなら全寮制という事くらい。集う生徒も大人しめな子から派手な子まで十人十色。
そんなありふれた普通の高校だった。

「おーい。入部届け出してない奴は今週までにちゃんと出せよ。しっかり体験入部してからレポートと一緒に出すこと!サボるなよ。出さなかった奴は担任の担当部に入部するから俺のところだったらバスケ部だからな」
朝のホームルームで担任がそう言った。1番活動日数の多いい部活で志願した人でなければ絶対に苦痛が伴うのは分かりきっている。
数人、自分が該当していると自覚したのか気まづそうな顔を浮かべるクラスメイトがいた。
私の高校は1.2年は原則、運動部に入部する校則になっている。
「兼高〜。お前何処も体験入部してないだろ。ちゃんと行けよ」
出席簿出頭をコツンと叩くと教室を出て行く担任を見送る。
机に突っ伏して目を閉じて現実から逃れる為に意識を意図的に手放した。

「何処も微妙」
帰りのホームルームで活動日一覧表を担任に手渡された。水曜日が活動日の部活はどこも活動日数が多くほぼ入部は締めていた。
「ん?」
1週間の中で最も活動日数の少ない部活が目にとまる。水曜日、金曜日の2日間だけという嬉しい日程に思わず笑みが溢れた。
取り敢えず、体育着に着替えて部室棟に向かう。途中、グラウンドを横切ると何やら女子が騒いでいる。体験入部だろうか、体育着に身を包んだ女子は数十名も居て、「自分は絶対にあの部活に入りたくない」と心底思った。
「すいません」
部室棟の2階、1番奥に進みドアをノックする。返事は返って来なく、虚しい空気が私を囲んだ。
「あ、体験入部?中に用紙あるから取り敢えず入って」
180センチの身長から見下ろす視線を痛い程感じた。