マリン・ブルー

そのまま渉は、防波堤の上を歩き出した。多分もう、足は慣れたのだろう。
渉のローファーを持ったまま、僕も防波堤の横を歩く。

『彼さぁ、女の子らしい子が好きなんだって』
『…へぇ』
『じゃあ何であたしと付き合ったの?って感じじゃない?』
『まぁ…な』
『はぁ~、この伸ばした髪、どうしろって言うんだろ』

曖昧な相槌を打ちながら、僕は渉を見上げた。

真っ直ぐ前を見据える渉。

その瞳には、微かに夕日が揺れていた。

『ばっかみたい』

長い髪を無造作にまとめる。
後れ毛がふわりと渉の肩を舞った。
長い足を止めることなく、渉は歩き続ける。
渉のシャツが、弾く海水に少しだけ濡れた。

『…切ってやるよ』
『え?』

渉が止まる。僕を振り返る。

『髪、切ってやるよ。渉に似合う髪型に』

丸くした目には、もう夕日は揺らいでいなかった。渉は強いと思う。昔から、そうだった。

『…そだね。穣に切ってもらおうかな』

ニッと笑う渉。僕にはない八重歯が、薄ピンクの唇から覗く。

『あたしに一番似合う髪型、知ってるのは穣だもんね』