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海に向かって歩いて行く。昔はバスを使っていたが、時間は腐るほどあるので、防波堤の側をゆっくり歩いた。
いつだっただろうか。昔もこうして、渉とここを歩いたことがある。
確かあれは、渉が初めて失恋した日で。
防波堤の側に立ち止まった。曇りのない青い空と、小さく波打つ白い海。
あの日はこの青色が、うっすらとオレンジに染まっていたはずで。
『…振られちゃったぁ』
隣に立っていた渉は、そう呟いた。
僕は何を言えばいいかわからずに、ただ目の前の夕日を見つめる。
『あたしみたいながさつな奴、嫌なんだって』
ケラケラと笑いながら、よっと防波堤の上に登る。
『持ってて』と、脱いだローファーを差し出した。
紺色のハイソックスを脱ぎ、無造作にカバンに突っ込む。
『あっつ!』
夕方だと言ってもまだコンクリートは十分に熱していて、渉はぴょこぴょこと細い足を踊らせた。
それが可笑しくて、僕は少しだけ笑う。
『あ、笑った』
渉は上から僕を見て、大きな丸い目を細めた。
小麦色の肌が、夕方のオレンジと交ざりあう。



