『渉さぁ、何で絵描くの?』
『何でって?』
『何がそんな楽しいのかなぁって』
『楽しいっていうか…あたしにとって絵は、日記みたいなものだから』
『日記?』
『うん。目まぐるしく過ぎる毎日のね、幸せだけを切り取った日記。忘れたくない幸せを、一瞬でわかる絵に残したいんだ』
『だからあたしの絵には、自分の幸せしか描かれてないの』
…渉らしいと、思った。
自信家で、強がりで、口では調子いいことばっか言ってたけど、本当は誰よりも寂しがりやで。
僕は幸せだった。
渉と双子に生まれてきて、
本当に幸せだった。
「ごめんな、渉」
ごめんな。
ずっとそれを、言えなくて。
渉をずっと、閉じ込めたままで。
僕はずっと、前に進めずにいたんだ。
渉のために泣くことを、ずっと忘れていたんだ。
受け入れることをしなければ、立ち止まったままで許されると思ってた。



