マリン・ブルー



…「帰って来るなら帰って来るで、一言くらい連絡寄越しなさいよね」

畳の上のテーブルに、汗をかいた麦茶が置かれた。

「父さんは?」
「海に出てるわ」
「まだ漁やってるんだ」

当たり前でしょ?、母さんは笑って、僕の前に座る。

「穣が帰るんなら、父さんに特別いい魚取ってきてもらえばよかったわ」

僕は笑って、冷えた麦茶を喉に流し込んだ。
体の汗が、すうっと引いた気がする。

「…母さん」

空になったコップを置いた。
カランと、氷が音を立てる。

「…手を合わせても、いいかな」

真剣な僕の声に、母さんはすぐにその意味を察した。
そして静かに呟く。

「…当たり前でしょ」


僕は小さく微笑んだ。でも、上手く笑えた自信はない。

黙って立ち上がり、その部屋へと向かった。