「ちょっ!優っ、待てって!!!」


こうくんは逃がしてくれない。

「えっ?!なんでっ?!」


「だって。優の手、震えてるから。」


震えてる? 私の手が?

こうくんに言われて初めて気づいた。
私の手。震えてるんだ。

バカじゃん私。なにしてんの…
ダサいよ。弱すぎる。

はやく、はやく止まって!!


「気のせいだよ。」

笑顔で言ってみる。



「嘘。」


こうくんには通じないんだ。

こうくんの瞳は真っ直ぐ私を見つめてて
今、顔を上げたら、

全部隠せなくなりそうで、、

こうくんを見れないよ。


「嘘じゃないよ。
ほんとにこうくんの気のせいだから」

「 だから?」

「だから、もう遅くなっちゃうし
こうくんも家帰ってゆっくりしてね。
ほんとにありがとう。」


ダメ。これ以上こうくんといたら
絶対、弱くなる。


「やだっ!」

「えっ?」

「帰んない。」


真剣な瞳のこうくんがここに居て。

あ、絶対逃がしてくれない。
そう確信した。