「後藤! こっち!」


自分にボールを渡すように手を上げてアピールしている1年、三輪 朝陽(みわ あさひ)君だ。

三輪君は二ノ宮と同じポイントガード。

ポイントガードはコート上の司令塔とも言われるポジションなので、積極性のある三輪君にはうってつけなんだけど……


「ちょっと! 今のじゃ遅いだろ!」


可愛い容姿に反して態度や口が悪く、チームの輪を乱しやすいのがたまに傷だ。

しかも、悪態をつきながら彼の息は完璧に上がってしまっていて。

1年チームのモチベーションに問題も出できたのか、レギュラーチームとの点数の差は開くばかりだ。

私の横に腕組みをして立つ監督は、小さく息を吐くとファウルのタイミングで選手交代を告げた。

もちろん、三輪君の名前が呼ばれる。

交代させられた三輪君は不服そうに眉間に皺を寄せながら、コートの外に出てきて、用意してあるドリンクに手を伸ばした。

そして、マネージャー!と機嫌悪そうに私を呼ぶ。

私は記録を他の部員にお願いして、座り込んでいる三輪君へと近づく。


「どうしたの?」

「アイシング」


そう言いながら、私へと右腕を差し出した。