二ノ宮の部屋は、彼と同じ匂いがする。

石鹸のような清潔感のある香りで落ち着くのだけど、今の私は心が安らぐどころか、祭りの太鼓のごとく騒がしい。

彼が使うベッドの横に敷かれた、お客様用であろう布団。

それを見た時、正直安堵した。

ベッドで一緒に寝るんだとばかり思っていたからだ。

いや、本当に勝手に思い込んでいた。

彼氏の家にお泊まりといえば、ひとつのベッドに眠るイメージが出来上がっていたから。

だけど、お風呂から上がって、先に部屋に戻るように言われて来てみれば布団が敷かれていて。

その時、思ったのだ。

1人で意識し過ぎてたんだと。


「そ、そりゃそうだよね」


普通に考えれば、友達の家に泊まりに行けば確かにベッドの横に布団を敷いてもらってた。

うち場合もそうだ。

友人が泊まりにくれば、私の部屋にある小さなテーブルを折り畳んでスペースを作り、そこに布団を敷いて友達に寝てもらってる。

二ノ宮も友達が泊まりにくればいつもそうしてるんだろう。

そして、別に彼は私と、その……今夜はキス以上のことをするつもりはなくて。

だから、布団を用意してくれたんだとそう考え、少し肩の力を抜きながら、二ノ宮が部屋に戻ってくる前にタオルケットにくるまって横になっていた。