━━━━━ひと月の後。

当然のごとく子などできなかった私の前に、あなたは笑顔で現れました。

今夜はあなたが来ると知っていたから、寝衣を新調して待っていたのに、何の準備もない時に来るなんて、やっぱりあなたって腹立たしい人ですね。

あんまり自然体だから、怒るのもなんだか馬鹿らしくなって、寝衣のことは絶対に言わないと決めました。

「今度はもう少し親しくなってからがいい、とお願いしましたので、」

本来なら言葉を交わすどころか、姿を見ることさえないほど、私たちは隔たっているというのに。

「今日一日、ご一緒してもよろしいでしょうか?」

あなたは断られるなんて、最初から思っていなかったのでしょう?

『優秀だ』という評価通り、本を読めば私の十倍以上早くて、私はあなたが図書室の本を全部読み切るつもりかと思いました。

私のことなど忘れたように読み耽るものだから、とても面白くありませんでした。

「本なんて読むのはやめて、一緒に絵を描きましょう!」

名残惜しそうなあなたから本を取り上げ、筆記具と紙を押し付けたのだけど、

「これは……熊?」

「猫です」

「猫がどうして二本脚で立っていますの?」

「……どうしてでしょうね」

絵はあまりに悲惨で、同じくらい細かい作業もできなくて不器用で。

「あなたは何なら上手にできますの?」

溜息をつきながら問いかけると、

「あれは得意です」

と、部屋の隅にある遊戯盤を指さしました。
試しにやってみると、何度やっても勝てません。

「少し緩めていただけます?」

結局それでも一度も敵いませんでした。
あれは本当につまらない遊びでしたわ。

全然面白くないのに、蜂蜜色の目が輝くのを見ていたくて、何度も何度も挑みました。

あの日、私は一生分負けたと思います。