あんなに暴力的な朝を、私は他に知りません。

何も知らされず、何も答えてもらえず、とにかくすべてが終わっていました。

だけど私は高をくくっていたのです。
きっとしばらくしたら、またあなたは呼び寄せられるだろうと。
たった一夜で授かるはずがないと。

私はあなたが来る日を心待ちにしていました。

空気に百合の気配が強くなって、「早くしないと見頃が過ぎてしまうのに……」と落ち着かない気持ちで。
また、今度は勝てるように、盤上遊戯の練習をしながら。
次に会う時はどんな顔をしたらいいのだろうって、恥ずかしさに身をよじりながら。

けれど、庭の色彩がまた色を変えても月のものはやって来なくて、あなたもやって来ませんでした。


大きくなっていくお腹を撫でながら、「まだもう少し、遅くてもよかったのに」と母親失格なことまで考えて、ようやくわかったのです。

あなたが私に授けたのは、この子だけではなかったのですね。


あなたに出会うまで、私は確かに幸せだったのです。

『これから先は苦しい』とあなたが言ったように、私が知っていたこれまでの幸せは、小さく小さくしぼんでしまいました。
考えたことのなかったこと、考えなくてよかったこと、たくさんたくさん考えましたわ。
毎晩鍛練を積みましたから、声を出さずに枕を濡らすことも、ずいぶん上達しました。

私、幼い頃ならともかく、泣くことなんてありませんでした。
そんな不幸に遭ったことなど、なかったのですもの。
これまで泣かなかった分をすべて吐き出すような涙でした。
本当に、瓶に溜めてあなたに見せたかったくらい。

あなたは何て言うかしら?
手巾を差し出すなんて芸当はきっとできないから、困って頭を掻くのでしょう。
それとも「よく溜めましたね」って、驚いて目を輝かせるかもしれません。

そんなことを考えたら、ふふっ、と笑えるようになって、それがだんだん習慣になりました。