奥さんのことを私に話したから気が楽だったのか、まさか、子供さんの性別まで教えて貰えるとは思わなかった。


課長に似てるのかな…と思いつつ給湯室へ行ってお湯を沸かす。
モーニングコーヒーを入れて持って行くと、顔を上げた課長が「ありがとう」と言ってくれた。


きゅんと胸が狭まりながら頭を下げて給湯室へ戻り、金曜日の夜に言われた紺野君の言葉よりも、たった一言の課長のお礼の方が衝撃力が強いなと考えた。


やっぱり彼を見るのはムリそうだと確信し、今度会ったら断っておこうと決意した。


いつ断れるだろうかと思いながら仕事を始め、午前中は忙しさもあって、あっという間に時間が過ぎて行く。

お昼時になり、ランチケースの入ったミニバッグを手にした私に、「社食行く?」と杏梨ちゃんが声をかけてきた。


「うん」


椅子から立ち上がって出ようとしたら、上座から止められた。


「横山さん、ちょっと」


大人っぽい男性の声にドキッとして振り向くと、上座のデスクに着いてる人が右手を上げ、悪いけど来て…と招いてる。

初めてのことでかなり驚いてしまった。