あの時、確かに課長は切なそうな顔つきで、自分が子供にとって頼れる人間であり続けないといけない様なことを喋ってた。

誰にも甘えてなんていられない、という覚悟が滲み出てて、奥さんがいるのに何それ…と、少しどころか大いにムッときてしまった。


私が課長には思いも告げらないでいるのに何それ!?って。
それじゃあ何の為に結婚してるの!?と無性に腹が立ってしまったのだ。


それで、「変でしょう!」と言い切った。
そこまではしっかり覚えてるけどその後は?


慌てる課長と驚く部長の声しか覚えてない。
それからタクシーの車内で、相川さんに「何も知らないくせに話に加わったりして」と呆れられたことしか。


何も知らないって何のこと?
私が知らないことを相川さんは何か知ってる?

それって課長のことなんだろうか。
私の知らない課長のことを相川さんや部長は知ってるって言うの?



「……何なのよ。それ」


不愉快な思いが湧いて打ち消した。
とにかく月曜日に出社したら、課長に無礼を謝っておこう。