(ホントにしつこいよね。私……)


家族にもよく頑固だと言われてた。
我が儘を通り越して頑固だと。

意思が強いといえばそうなのだろうけど、不器用過ぎてイヤになる。
新しい恋の始め方すらも思い浮かばず、グズグズと思ってばかりいる。

季節はもうすぐお盆を迎えて、それが過ぎれば秋風も吹き始めるというのにーー。



ノロノロと立ち上がって庶務課へ帰った。
ドアを開けると誰もおらず、ホッとして自分の席に座る。


つい昨日、杏梨ちゃんから報告を受けた。
営業部の彼とはうまくいってて、週末には彼の両親に会うのだ…と。


「すっごくドキドキしてるんだ〜」


杏梨ちゃんはそう言って胸の内を明かした。
女子力の高い彼女のことだ。きっと彼のご両親にも好かれ、そのうち結婚にも発展していくことだろう。



(結婚か。私には無縁かもな…)


課長のことを好きでいる限りない。
他の誰かに気持ちが移らない限り、そんなことは一生巡っても来ない。


課長の奥さんになる。
そんな夢みたいなことを思い描きながらデスクにうつ伏せた。