狼の王さまに笑顔を。

「…フフ…叶わないわね。音羽ちゃんには。」


「えっ…?どうして??」



切なそうに笑うジルさん。



「ノア様を変えたのは…あなたよ。誰1人ノア様を変えられることが出来なかった。さすがノア様が愛した方ね…あなたを見ていたら何だかわかる気がするの。そんな子に叶うはずないわ…」



私はノアに愛されているのだろうか…?


付き合っているから好きだと勘違いしてるのかな。


分からないや。



「さぁ、送るわ。ノア様の元へ早くお帰り、心配している。」




微笑むと私を立ち上がらせ、何かの術を口にする。



すると、私の傷と痛みが軽くなる。



「痛みのほとんどを私に移したの。でもこれで許してもらおうなんて思ってない。私の事はノア様に話してくれて構わないわ…それと…ここら辺は危険だから1人で歩くのはやめなさい。」



あ…だからノアは敷地の外へ出るなって言ったんだ…


ジルさんはそうやって心配してくれる。
この人…やっぱり根は良いひとなんだ。


確かに酷いことをされた。
だけどそれを他人に告げ口する必要がどこにあるんだろう。


偉そうなことは言えないけれど…


誰にだって失敗や間違った道へ進んでしまう時がある。


だけど、問題は失敗した事では無い。
それを踏まえた上でどう生きていくかが問題なんだと思うんだ…


だから私は…



「ジルさん。私は…ノアにジルさんの事は言いません。別にいいんです。あなたが今こうして反省してくれた事だけで本当に十分なんです。だから…これからもノアの事見捨てないであげてください。」



私は深々と頭を下げる。