狼の王さまに笑顔を。





「ノア様大丈夫でしょうか…」



「そうですね…ララ様が亡くなられたというのに静かに仕事をこなされている……」




顔色ひとつ変えず生活をしているノアを心配するローレスとアリシア



ノアは両親を失い、心の支えだったララさえも失い、もう何も失うものは無いと心を閉ざしてしまっていた。



嬉しい事怒る事も悲しい事も楽しい事も…
全て忘れてしまった



ただひたすらに王の仕事をこなし
国を守っていくことだけを考えた









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街が荒れている話を受け下見にノアは街へ出ていた。



まだ日が沈む前だというのにその街は暗く外には誰も居ない




「なんだここは…」





ポツリと一言吐くと




「いやっ………!やめて…っ…」




耳に入ってきた女の泣き声


助けを求める女の声




そして怒鳴る野太い男の声





「………何だ??」




足を止め声のする方へ向かうと、



そこにはあってはならない光景に
顔を殴られたような衝撃を受けた



その光景に耐えられず足は動いていて男の腕を掴んでいた




「そこまでだ、やめろ…」



「?なんだ兄ちゃん??綺麗な格好しているな??お坊ちゃまは引っ込んでな!!」



「……お坊ちゃまか、確かにそうだな。そのお坊ちゃまはこの国の王だ…」



「王?何言ってやがっ………ノ、ノア陛下ッ…?!」



「……あぁ、そうだ。俺はこの国の王、ノアだ。」



「か、勘弁してくれ…!俺は何もしてないからな…!」



「ここまでこの女に危害を加えておいて何を言っておる?」



男はノアに掴まれた腕を振り払いビビって逃げていった。




「あ…!おい!」



ノアは追いかけようとするが

服がはだけ口から血を出している女を放ってはおけず


地面にへなっている女を見下ろし声をかけた




「おいそこの女…」



「は、はい…」



「大丈夫か…」



「はい……助かりました…ありがとうございます…」



「すまなかった、このような事をしなければ生きていけない国にしてしまって…こんな事をする為に生まれてきたわけでは無いのに…」



「…?」



「いや、こっちの話だ……。それより、名はなんという?」



「エレナと申します……」



「そうか、エレナというのか。もしエレナさえ良ければ俺の屋敷へ来ると良い…」



そう言ってエレナに手を差し出した。



「良いのですか…?先程王様だとか何とか…なにぶん卑しい者です…そんな汚い私を連れていかれるのですか…?」



「エレナは汚くない…もしそうだったとしてもそうさせてしまったのはこの俺だ…責任をとらせてくれ…」



「有り難きお言葉……ではお世話になっても良いでしょうか?」



「ああ、もちろん。歓迎しよう…」







エレナはノアの手を取り立ち上がる


そしてノアは自分の着ていた上着を脱ぎエレナに着させ屋敷へ帰った。