「ノ、ア…?」
「もちろんこちら側で生きたいと言うのであれば歓迎しよう。…帰りたいと、そう願うのであれば……止めはしない」
「…ノア!!!」
淡々と喋るノアに私はつい大きな声を出してしまった。
何をこんなに焦っているのだろう
さっきまで心地よかった風も落ち着かない
こちらを見るノアの視線が痛い…
「待ってよ…ノア…なんで今そんなこと…」
どちらで生きたいかなんてそんなの…選べるはずない……
パパや友達には会いたいまたいつもの生活を送りたい…
そうは思うけど、そっちを選ぶということは…
この世界を離れなきゃならない…
逆に大好きなノアと生きていくってことは人間界には帰れない…
そういう事なんだよね……?
「いい機会だから話しておかなければいけない事だったから」
どっちを選んでも私はどちらかを失う………?
「…そ、そうだ!行き来は出来ないのっ???そうすれば辛い思いしなくて済むでしょ!!?」
私の切羽詰まった回答にノアは真剣な表情で私を見る
「音羽は人間界に居た時ルーティオの事を知っていたか?」
「…?知らなかった、こーゆー世界があるなんて騒がれた事なんて…」
「俺は今までルーティオに迷い込んだたくさんの人間達を元の世界へ帰してきた…なのにこの世界の事が人間界に出回らないのは何故だと思う?」
「……なんっ…で…???」
嫌な予感がした
「記憶が無くなるから。人間界に帰ったら普通に生活してきたように目が覚める、だからルーティオの事は何も覚えていないんだ」
的中……
そんな………
そんなこと聞いたら……
「帰ったら私はノアのこともほかの皆の事も忘れちゃうってこと…??だったら…私は!!帰らな!「音羽!!!!!!!」」
私の声を遮ってノアが名前を呼ぶ
「それで俺達を選ぶな…」
「なんで…??なんでよ!忘れちゃうんだよ?!今まであった事、思い出全て!!!」
「…ルーティオに身を置きすぎると人間界に戻れなくもなるんだ…このまま居続ける決断をすれば家族や友達とは二度と会えない、、」
……………本当、どっちを選んでも辛いだけじゃない………
「なんで今まで黙ってたの…なんで私を引き止めたりなんかしたの…こんな感情知らなければ辛い思いしなくて良かったのに…」
すまない…ノアはそう言っていた
完全に八つ当たりだ。
ノアは悪くない、
最低だな……
混乱してる私の頭の中
帰ればこの世界の事を忘れてしまうなんて
そんなの聞いたらもちろん帰りたくない
帰れない
でも……………………………
さよならも言わずに二度と会えなくなるなんて…
思ってもみなかったよ……
この期に及んで優柔不断な自分が情けない…