狼の王さまに笑顔を。




「なぁ…音羽。ちょっとそのまま聞いて欲しい。」


「なに…?」



私を抱きしめたままノアが口を開いた。




「俺はお前を利用していた。周りが身を固めろとうるさかったから媚売ってこない音羽がちょうど良かったんだ」



「うん。」



それは最初からわかっていたこと。


そもそも帰してもらう約束で私はその話に乗ったんだ。



「こっちはお前を利用しているっていうのに俺に笑って話しかけてくるから最初はこいつ大丈夫なのかと思っていた。こんな俺に笑いかけてくる奴なんて居なかったからな…」


「音羽が居なくなった日、俺は心に穴があいたみたいに寂しかった…音羽が大事だと、守りたいと思ったんだ。」




えっ………


そんなの聞いたら…嬉しくて………


涙で目の前が霞んでしまう。


流れないようにとノアに回した腕に少し力が入る。



「それなのに俺は音羽を何度傷つけただろう…」



「そんなことない!!ノアは!ノアは私を助けてくれた!!だから私は今こうして生きられてる!!!」




体を離しノアの顔を見る。


涙目の私に少し驚いた顔をしていた。




…そう、あの時。
思い出した。


意識を無くしていた時
誰かがずっと私の名前を呼んでいた。


その声を頼りに進んだら戻ってこれた。


あの声はノアのもの。


ノアが居なかったら私は今頃…


ノアが私を導いてくれてた。


だからそんなに自分を責めないでほしい……



「まあ最後まで聞いてくれ。」





ゆっくり、ノアは話の続きをはじめた。