狼の王さまに笑顔を。

医務室に行くと手当を受けて眠っているジルとそばに付いていたエレナが居た。


ジルを見ると少しうなされているようだったが傷が浅くて安心した。


ただ、音羽にバレないよう庇いながらたくさんの力を使ったからその代償が身体に来ているんだろう。


ゆっくり休め、、


エレナがこちらを見てローレスと同じく
ぐったりした音羽と血を流している俺の姿に目を見開いて固まっている。




「ノア様…血が出ているようですが…あの後何が…それと音羽、様の意識が…」



エレナが近寄ってきて問いてきた。
泣いてしまいそうな顔をしている。



「俺は大丈夫だ、傷のわりには回復している。それより音羽がな…」



エレナは音羽が傷つくのを目の当たりにした。


可愛がっていた音羽がこんな姿になり相当なショックを受けたのだろう、
既に目に涙が溜まって零れそうだ。


医者が音羽の状態を診て言う。



「傷が深く…出血も酷い。それと傷口から何かが入り込んでいて音羽様の生気を吸い取っています。輸血して吸い取っているものを取り除かなければ……このままでは音羽様の命が危ないです。」



俺はあったことを簡単に話す。


音羽の生気を吸い取っているものは…
呪文にかけられたあの剣に仕込まれていたものだろう。


術が音羽から伝わってくる。


それは薄々気付いていた…


幸い、俺の身体はそれら術や毒ものは慣らされてるから治癒力が普段より下がるだけで特に何も無かったが…


音羽は普通の人間…


治癒力も俺達より低い。



「そんな事が……。となると吸い取っているものは悪魔の術…ですが今のノア様の状態からして解くのは厳しいかと……」



悪魔の術を解くというのは出来なくはないが力を使う。


少なからずその術に当たり、負傷している俺を心配してローレスは言うのだろう。


だが今はそんなことを言っていられない。



「心配させてすまない。だが音羽に何かあった時、何も出来ないのはもう嫌なんだ」



「しかしっ、あなたは一国の王…」



「あぁ分かっている、ローレス。無茶はしない。」



音羽に言われたもんな、自分を大切にしろって。


だから自分も守るし音羽も助ける。


が…術を解いたとして、、
それでも輸血しなきゃ血が足りないのか…



「問題は輸血だな…俺達の血を音羽に移してはいけないのか?」



「ダメです。我々と人間とでは血の種類が違うのですから拒否反応を起こしてしまいます。」



そう伝える医者に対して



「しかし…これは聞いた話ですが遺伝子が変わって我々のような動物の一族になる…ということもあり得ます。」




続くようにローレスが言った。