「あった」

合格発表の日。


母さんの嬉しそうな声をぼんやり聞きながら、俺──片野悠人は少し遠くにいる気分だった。

同じタイミングで数字を見に来たあの子はどうだったんだろう。

ま、どうでもいいけど。

「じゃあ、悠人。お祝いだ」

父さんが柔らかく言うと俺が言うより先に母さんが、

「お寿司にしましょうよ、お寿司」

と言った。

「んー、悠人は何がいい?」

「それでいいよ」

「じゃあ行こう」

「うん」

2人ににっこりと微笑んでみせたけど、

小さなため息は漏れてしまった。