教室の窓から見えるのは青い空と、大きな積乱雲。

その景色は、暑さをいやがうえにも引き立てる。

今日の最高気温は30℃を超えるらしい。

グラウンドからは生徒のはしゃぐ声が聞こえる。

「菜月、早く行こう」

教室のドアの前で、友人の明日香と佑衣が立っている。

「うん、今行く」

カバンから取り出したのは数Ⅰの教科書。

この表紙もずいぶん見慣れたものだ。

背中に引っ付いたシャツは嫌悪感を生む。

銀色のペンケースを教科書の上に乗せると、明日香たちのほうに走る。

そういえば見慣れたのは教科書だけではない。

校舎では迷わなくなったし、クラスメイト全員のことも覚えた。

廊下の窓から見えるのは、イチョウの並木。

葉っぱがゆさゆさと揺れるのに、風向きのせいか校舎の中まで風が入ってこない。

「テストどうだった?」

明日香が尋ねる。

期末試験も終わり、徐々に答案が返ってきている。