異世界の男に恋をしました


ざわつくグラウンド



改めて見ると本当に髪色が派手




ダラダラな宣誓も終わって種目に入る



プログラムを見ると徒競走



「紅雨初っ端から出番だね〜」


扇子で風を送りながら雛が話しかけてくる



「そうだね。しかも私の出番3組目だしね。でも終われば他の種目無いし。頑張ってくるね」



親指を立てて雛の顔の前に持って行く



雛も同じ様に親指を立てて


「頑張っておいで、准司さんも応援してるよ?」



何でかな。最近紅華の女の子メンバーに准司さん准司さんって弄られるんだよね。



謎過ぎる



「後で聞きたい事あるんだけど良い?」



「?良いよ」



ニッコリ笑って快く承諾してくれる



よし。走ってこよう



狙うは組で1番



軽く跳躍してから位置につく



隣2人はいかにも体育会系女子



その余裕かました面、直ぐに崩してあげる



ピッと短い電子音が鳴ると同時に走り出す



出遅れちゃったかな



でもこれ位なら...余裕



本気は出したくなかったけどな



グッと脚にさっきの何倍もの力を入れる



強く強く地を蹴る



ゴールテープを切って後続を見る



あと3分の1ってところかしらね



「あの、これってタイムとか測ってます?」



普通測ってると思うけど



「測ってますよ。知りたいですか?」



にこやかに受け答えしてくれる女の子



企業とかのオペレーターとか務まりそう



首を縦に振って肯定の意を示す



「じゃあちょっと付いてきてください」



ストップウォッチを持った先生にタイムを聞いてくれるらしい



何でこんな不良校に居るのかしら



「成龍さん、タイム8秒53ですって」


速いですね〜って



可愛らしい笑顔を向けてくる



「ありがとうございます。すいませんね、お手数掛けて」



そう言って頭を下げて踵を返す



雛と日和ちゃんに報告しようっと



少し小走りで戻ろうとすると



「ちょっと!」



怒ったような声が聞こえた



少し止まって振り返る



「何ですか?」


「何ですか?じゃないわよ!!何で私がアンタに負けなきゃなんないの」


これまた面倒くさそう



前のナンパ男より面倒臭いかも



体育会系女子に見えたからしつこく無いだろうって思ってたけどそうじゃないらしい


「結果は結果です、それに文句を言う様なら陸上お辞めになったらどうです?」



早く2人に会いたくて歩き出そうとすると



「ちょっと来て」


服の首の部分を掴まれて無理矢理連れて行かれる



これは...暴力沙汰にならないといいんだけど



顔に傷が付いたら嫌だなぁ



「こ〜う〜うちゃん!」


「うっ.....」



突然武政くんにタックルされた



受け身出来ない状態なのに...



「痛い...」



武政くんをちょっとだけ、本当にちょっとだけ睨んだ