「行った!」

誰かがそう叫んだ。

残り時間は5秒のラストチャンス。
次々と敵の守備を交わして突き進む。

「雄星!!!」

「部長ー!!!」

敵も味方も声を張り上げて叫びまくり会場は大騒音状態。そこに微かに響いた仲間の声。

「行っけぇぇぇー!!」

その声に後押しされるようにゴールの目の前に立ちシュートを構える。

「ビィーッ!!!」

結果は…


95対96。シュートを決める直前のホイッスル。負けた…。全国大会連勝校だった四ツ橋中の負け。

静まり返る自分たちのチームの観客席とコートにたたずむ選手達。誰も一言も発しない。下を見てただただその現実を受け止める。

自分たちのチームと真逆に歓喜で溢れる相手チームの観客席。

でもわかっているはずだ。その裏には市大会、県大会、地方大会、全国大会。

その中で落とされてきた数多くの学校があることを。

そしてその数多くあるなか勝ち上がった準優勝のチームが1番悔しい事を。

全国大会連準優勝校の彼らはわかっているはずだ。それをもみ消す歓喜に溢れた状態で。