鈴峰side




気付いたら立っているのは星宮と副総長らしい男が2人の3人だけだった。




ーパンッ!




銃声が響く。




そこには星組の姫、奈胡が捕まっていた。




「キャーァァァア!!!!!」




叫ぶ奈胡。




正直その叫び声は影狼を興奮させるだけ




「静かにしろ!耳元でうるせぇな」




銃で奈胡を殴る。




ドカッという鈍い音がして奈胡は気を失った。




「あんたの最愛の帝さんの話でもしよーぜ?」




ニヤニヤ笑う影狼。




「あれは何年前だったか忘れちまったけどよ。銀狼、あんたの座が欲しかった。だから、あんたを怯ませるのはアイツだけだって分かったから騙してこの倉庫に連れてきた」




そう、コイツは怪我人がいるって言って帝を此処に連れてきた。




だけど、もちろん怪我人なんて1人もいない。




油断している帝を背後から襲った。




「黒狼と同じ様に拘束しておいた。だけど銀狼が惚れた男だし噂では聞いていた、とてつもなく強ぇ奴だって。だから、手も足も銃で撃ってやった。血が溢れるのが面白かった。コイツを助けにあの銀狼が来るって考えたら興奮した。」




あの頃を思い出しているのか楽しげに話す影狼。




「あんたが到着した頃にはほとんどアイツの意識はなくなってた。俺がアイツに銃向けてるから銀狼は近づけない、そう思ってたのに光りみてぇな速さでアイツに駆け寄ってきた。救急車呼ぼうとしたり、色んな奴に電話なんかかけてるから俺はアイツの心臓を撃った。」




その話を聞いている蜜月たちは苦しそうな表情を浮かべている。




こんな話聞くのでさえ辛い…




「だけどその途端、銀狼は大声で叫んだ後俺の意識がなくなるまで殴り続けた。それからここまで治るのにこんなに時間がかかっちまった。余計に興奮する、中々手に入らないモノ程手に入れたくなる。次は黒狼、あんたが人質だったのに左手だけじゃ甘かったみてぇだな?」




蜜月を見ながら首を傾げる。




「あぁ、それからアンタんトコの総長殺ったの俺だぞ?勘違いも程々にしろよ?銀狼に人が殺せる訳がない!俺にしか出来ないんだよ!!ナメやがって」




人を殺した事を自慢出来ると思ってるのらしい




過去に何があったらこんな風になれるんだよ…




見てて辛いんだよ…




時々見せる哀しそうな眼とか




苦しそうな笑顔とか




「お前はそれでいいのかよ?アンタを止めてくれるあの子に顔向け出来んのかよ?!」




あたしの言葉に影狼が少し油断する。




「あぁ!聞けよ!俺の通り名カッコイイだろ?影狼だぜ?」




話を逸らすように叫んだ影狼。




「そんなに褒めんなよ…照れるじゃねぇか」




あたしはニヤッと笑った。




「は?銀狼じゃねぇよ、影狼だって言ってんだろ?聞こえねぇのか?!」




「その名前つけてやったの、あたしだよ。影狼」




それを聞くと目を見開いた。




「いつまでも影で生きてろって意味を込めて付けてやったんだよ!あたしに勝てずにいつまでも地を這いつくばれって!!」




影狼は膝から崩れた。




「最初からお前に勝ち目なんかねぇんだよ。また来てくれるんだろ?あの子…心配かけさせんなよ」




あたしが呟くように言うと影狼の目から涙が溢れた。




「あいくん!!!!また、そんな危ないの持って!!」




二つ結びの女の子が走って倉庫に来る。




「メールきてるの見てびっくりしたんだから!!やめてよって何回も言ってるじゃん!!何してるのか知らないけど…やめて…私、あいくんが好きなんだから!!」




女の子の急な告白に此処にいる皆が目を見開いた。




「は?こんな俺のどこがいいんだよ?親はこーゆー奴等に殺されて身寄りがねぇような奴のどこがいいんだよ!」




「私に優しいじゃん!どんな時も助けてくれたじゃん!私もパパもママもいないの知ってるじゃん…あいくんの御両親と一緒にいる所を殺されちゃったんだから…」




衝撃的すぎる事実にあたしたちは固まった。




「稔さんが拾ってくれなかったら私たちも死んじゃってたかもしれないんだよ?恩返ししようよ?」




涙でぐちゃぐちゃになりながら話すその子は儚くて守ってあげないと壊れちゃいそうだった。




「稔さんだって、病気で余命宣告されちゃって…それなのにそんな姿いつまで見せていくの?!自立しなきゃ!!ねぇ!どうして目の前から目を逸らすの?変わらないと、変わっていかないといけないんだよ。いつまでも子どもじゃいられない、親がいなくても社会で働いていかなきゃいけない。親がいないのは言い訳になってくれないんだよ?!」




影狼は銃を壊すとその子を抱きしめた。




「ごめん…こんな俺の事見捨てずにいつも側にいてくれて、連れ戻そうとしてくれて、可哀想な子に見られたくないとか言っといて心配して欲しかったんだよ、きっと。俺も、好きだよ」




泣き続けるその子をもっときつく抱きしめた。




「なんか幸せな雰囲気になってるけどさ、こっち解決してないから」




あたしの言葉に少し恥ずかしそうにする2人。




すると、急に土下座をした影狼。




「ごめん!本当にすみませんでした!謝って済む事じゃない事くらい分かってる…気が済むまで殴ってくれ…」