どうしてあたしは…
この人に信頼されたいって思うんだろう。
どうしてこの人は…
人を寄せつけない鋭い瞳をするのに、その瞳の奥はどこまでも澄んでいるんだろう。
どうしてこんなにも…
この人の手は温かくて…
離したくないって思ってしまうんだろう――
「……村瀬」
ふいに目尻を伝った涙に、2人同時にはっとする。
すぐに拘束を解かれ、あたしに馬乗りになっていた福嶋くんが離れていった。
「…悪い。怖がらせて…」
福嶋くんの親指が目尻に触れる。
優しく掬われた指先の温かさに、また熱い涙がこぼれた。
「…ごめんな。…ごめん」
福嶋くんが謝ってくれるたびに首を振るけど、それでもとめどなく涙はあふれてくる。
「…違うの…福嶋くんのせいじゃ…」
福嶋くんが怖かったから泣いたんじゃない。
あたしが泣いたのは…
あたしが泣いた理由は…
「……手を」
「…手?」
「福嶋くんの手をね…」
ずっと頭を撫で続けてくれていた福嶋くんの手を包み込むようにそっと握る。
大きくて逞しくて、まるで陽だまりのように温かな手。
どうしてかな…?
あたしはこの手が好き…
この手が触れる場所はなぜかすごく温かくなる。
だから離したくない。
だからこうしていないと不安になる。
この手をつかんでいないと…
この手を捕まえていないと…
もしもこの手を離したら…
福嶋くんはどこか遠くへ行っちゃうような
そんな気がするから――…
だからあたしは…
この手を絶対に離さない――…
≫≫≫《後編》へつづく

![Eternal Triangle‐最上の上司×最上の部下‐[後編]](https://www.no-ichigo.jp/assets/1.0.809/img/book/genre1.png)
