『…ユリ…カ』





もう随分と口にしていなかった名前。



忘れないと前には進めないからと
遠い昔に頭の片隅に追いやったままの女――。





『隼人』



決壊したように記憶がよみがえる。



『隼人』



長い黒髪の似合う、



『隼人』



いたずら好きでちょっと抜けてて、



『隼人』



人一倍努力家で、



『隼人』



ずば抜けて頭が良くて、



『隼人』



まっすぐ自分の夢に向かってて――



『隼人』



なのに俺がユリカの夢を…



『隼人』



ユリカの夢を…



『隼人、ずっと一緒にいようね』



夢を…



『約束だよ、隼人』



俺のせいで…



『隼人ごめん』



ユリカの大切な夢を…





『もう隼人とは一緒にいられない』





未来を…








『隼人といるとつらいの――…』








俺が…



ユリカの夢も…



希望に満ちた未来も…



すべて…







――光ごと奪い去ったんだ…